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【検討-刑訴法1】保釈許可決定の執行停止申立ての法律上の根拠

2019-03-12

【契機】

保釈許可に対して検察官が不服申立てを行った場合、執行停止の申立てが同時になされるようだが、この執行停止の法律上の根拠はどこにあるのか?

【検討】

勾留によって身柄の拘束を受けていた被疑者が起訴されると保釈請求をすることが可能になります。被告人が保釈を望む場合、起訴後すぐに保釈請求をすることになるでしょう。この保釈の可否は、当該事件の裁判を担当する裁判官以外の裁判官が判断するのが原則です。裁判官が保釈を許可する決定(ほんとうは命令)を下した場合、検察官がこれに対して不服を申し立てなければ被告人は釈放されることになります。

しかし、検察官が保釈許可決定に対して不服(準抗告)を申し立てた場合はどうなるのでしょうか。保釈許可決定が出ている以上、被告人はとりあえず保釈されるのでしょうか。その後、準抗告に理由があるとして保釈許可決定が取り消されたら、被告人はまた留置施設に入れられてしまうのでしょうか。せっかく釈放されたのにすぐまた身柄拘束を受けるというのもどうなんでしょう。

しかし、結論からいえば釈放されたり、すぐまた勾留されたりという事態はあまり発生しないようです。なぜなら、検察官は不服申立(準抗告)を行う際に、保釈許可決定の執行停止の申立ても行うからです。

刑訴法424条は、準抗告ではなく抗告に関する規定ですが、原裁判所(保釈許可決定を出した裁判所)も抗告裁判所(不服の審査を行う裁判所)も執行停止を決定できるということを明言しています。この執行停止決定は、裁判所が職権で行うものなので誰かの申立てがなくても裁判所の判断で執行停止とすることができるのですが、事実上、検察官が裁判所の職権発動を促すために執行停止の申立てをするということです。

この抗告に関する刑訴法424条は、刑訴法432条によって準抗告の場合にも準用されています。そのため、保釈許可決定に対する準抗告がなされた場合、刑訴法424条が準用する刑訴法432条によって執行停止となることが多いのだと思います(※2)。つまり、準抗告がなされた場合は、とりあえず被告人は釈放されないことになりますが、その後に準抗告が棄却されると執行停止の効力が失われて保釈許可の執行が可能となります。

ただし、準抗告棄却の決定に対して特別抗告がなされることもありえます。特別抗告というのは憲法違反、最高裁判例違反、大審院・高裁判例違反(※3)という3つのいずれかに該当する場合にのみ行える特別な不服申立てのことです。刑訴法434条により、抗告に関する執行停止を定めた刑訴法434条が特別抗告にも準用されます。その結果、特別抗告がなされた場合にも保釈許可決定の執行が改めて停止されることがあるということです。

【未解決の疑問】

裁判官が一人で行った裁判でも、裁判所として行った裁判はに対する不服申立ては、準抗告ではなく抗告によると考えられており、保釈許可決定に関する先例として裁決昭和31・6・13〔集14巻1号29頁〕が存在するとのことである。第1回公判前であれば公判担当以外の裁判官が保釈許可決定を出すのが原則とされているが(刑訴規則187条1項)、第1回公判前であっても一人の裁判官が裁判所として決定として保釈許可決定を下すことがあるのか。先の裁決を読めば分かるのかもしれない。

 

(※1)保釈許可決定に対して、抗告と準抗告の2種の不服申立てがありますが、その違いは簡単に整理すれば次のようになります。

第1回公判期日「前」→公判担当以外の裁判官が「命令」の法形式で保釈許可決定をする→「裁判官」が行った裁判(命令)に対する不服申立ては「準抗告」となる

第1回公判期日「後」→受訴裁判所が「決定」の法形式で保釈許可決定をする→「裁判所」が行った裁判(決定)に対する不服申立ては「抗告」となる

(※2)刑訴法432条は、抗告に関する規定が準抗告にも準用されますよということを定めている規定ですが、抗告の手続について定めた刑訴法423条は準用するとは言ってません。刑訴法432条は、抗告するなら抗告状を原裁判所に提出してくださいと定めていますが(1項)、準抗告の申立ては刑訴法429条1項によって準抗告申立書を原裁判所ではなく、直接に管轄の裁判所に提出することになります。そうすると、制度上は保釈許可決定を行った裁判官が準抗告が行われたことを法律上は知る立場にないことになります。すると、刑訴法は準抗告の場合の執行停止は、準抗告の当否について判断する裁判所(準抗告審裁判所)のみが判断することを予定しているのではないかという疑問が生じます。すなわち、抗告のように原裁判所(刑訴法424条1項)が自ら執行停止の決定をできるのかという論点が発生します。結論からいえば、準抗告の場合も、保釈許可決定をした裁判官が自ら執行停止の決定もできるというのが実務、学説のようです。

(※3)高裁判例違反は、新刑訴法施行以前に高裁が上告審としてした判決に関する判例のことです。